税務調査で売上経費が否認された場合の仕訳方法
- 公開日:2014/10/03
- 最終更新日:2015/03/26
税務調査で、「売上計上がもれていた。」「経費(損金)が認められなかった。」と、なった場合にはどのように考えるのでしょうか。税務調査の完了近くでは、次のような話が調査官からされます。
1.役員報酬として仕訳
売上計上もれ(除外も含みます)」「経費の否認」などがあった場合、調査官から、次のような説明があります。「否認となる金額(上記のような、売上もれや経費否認)は、社長の認定賞与で処理させていただきます。」つまり、社長の賞与ですよ、となります。この「臨時の賞与」は、一般従業員がもらっているような賞与とは違い、経費(損金)にはなりません。
例えば、「売上もれ(除外)」が300万円あったとします。それを仕訳にすると次のようになります。
役員報酬 300万円 / 売上高 300万円
と処理をしますが、法人税の計算では、役員報酬は必要経費に計算できません。この時点で、
- 法人税
- 消費税、
- 法人県民税、
- 事業税、
- 法人市民税
の追徴課税が発生して、納税をすることになります。同時に、追加で売上計上された金額は、全て役員報酬と処理されますので社長の
- 所得税の追徴課税
- 住民税の追徴課税
などの納税をしなければなりません。
このように税務調査での否認は、その内容にもよりますが法人税、消費税、法人市県民税、事業税、社長などの所得税、住民税に影響があります。法人の所得が無く、売上を追加で計上したとしても所得が計算されない、赤字所得のままという場合は、法人税、法人市県民税に影響は無いとしても
繰越損失金額が減ることになります。
2.役員に対する貸付金として仕訳
税務調査での否認は、役員報酬で処理するのが一般的と言われていますが、他の方法が無いわけではありません。役員報酬は賞与として、お金を社長がもらった(使ってしまった)という処理になるのですが、否認内容や経緯によっては、役員報酬ではなく「役員に対する貸付金」という処理を行うケースもあります。役員報酬だと社長個人の所得税や住民税に影響がありますが、貸付金であれば、追徴課税がされることはありません。
しかし、貸付金として処理された後は、
- 貸付金の返済計画の策定
- 貸付金の返済(返済されたことが分かるようにしておく必要があります。)
- 貸付金に対する利息の計算(金利を設定して、毎年度、調査法人が受け取ります。)
をする必要があります。貸付金処理をした後は、その返済などの処理が適正に行われているのか確認が必要になるため、短いサイクルで次の税務調査が来ることも想定されます。※法人が金銭を貸し付けた際に、金利をつけなければならないのは、通常期における処理でも同様です。
否認された金額の処理について、認定賞与とされるか貸付金とされるかは調査内容などにもよります。しかし、両者には大きな違いがありますので、ご注意を。
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