必要経費の水増しについて
- 公開日:2015/04/09
- 最終更新日:2015/04/09
毎年、決算の時期になりますと税金の負担額がどのくらいになるのだろうかと心配になる方はたくさんいらっしゃいます。税額が思った以上に高いと、なんとか減らせないかという思いが沸いてくるものよ~く分かります。
今回は、必要経費の水増しについて説明をします。
1.その支払いは事業に関係あるの?
税務調査では、入念にレシートや領収書をチェックして必要経費の内容を確認します。その支払いの目的が事業にどのような関係があるのかどうか。所得税法では、「売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用」という書きぶりになっています。
所得税基本通達では、その範囲や判定などの基準を設けています。これらの条件をいかに満たしているか、その内容等について納税者の方から説明を求めるのです。
例)飲食店を利用した際のレシート
飲食の費用などは、次の項目について確認がなされるケースがおおいですね。
・いつ
・誰と
・どのような目的で
・そのお店を利用したのか
やはり、事業に関係する以上、何らかの目的があるはずです。
新しい取引先との会合、商談、取引先の紹介などなどが目的にあたります。長い付き合いの取引先との懇親会でも、情報交換や業界の情報集など、内容によってはOKではないかと思います。
かつて、私が所得税の調査で訪問した際の話ですが、さきほどのような考えで見ていくと、ふとしたレシートに目が止まることがありました。次のようなレシートです。
・土曜日や日曜日の日付がある。
・来店人数が1人または子供の数が含まれている。
このようなレシートを見つけると、事業に関係していないのではないかとの質問をします。結局、子供の数まで入っているものは家族での利用であることが多く、必要経費にはならないレシートを見つけることが多くありました。
例)飲食店を営んでいる方のレシート
また、飲食店を営んでいる方でよく見られるレシートとして、仕入として計上しているもののうち、
・打ち込み時間が近いレシートがある。
・購入されているものに子供向けや栄養ドリンク等がある。
最近では、レシートが不要だとレジ横や買い物カゴからレジ袋へ入れ替えるスペースなどに回収用の箱が置いてあったりします。そこから拾ってきたのでしょうか?あまりにも記録された時間の間隔が短いため、質問をしたことがありました。
自分で支払ったものでもないレシートについて経費計上をしていたのですが、悪質であるとして、重加算税対象となったことは言うまでもありません。
2.家事関連費について
特に個人事業者の方は悩むのが「家事関連費」です。ご自宅を事業用に利用していると、自分としては、この程度は事業で利用しているだろうと考えて、家事按分割合を計算していると思われます。しかし、「この割合は本当に問題ないのか」と、不安になる方もたいへん多いものです。
「電気代は30%で、水道代は20%、ガス代は10%の割合で計算している。」と主張しても事業の内容によっては、水もガスも関係が無いこともあります。そのような計算では、「経費が多すぎる。過大計上だ。」と言われてしまいます。
よく、知人の事業者がそのように計算しているから、自分も入れているとおっしゃられますが、知人の事業内容と全く一緒とは限らないうえに知人の経費算入根拠も誤りであるかもしれません。ご自宅を利用しての事業について、最近では合理性が無いような理由を主張される方もいます。ぜひ、気をつけていただきたいポイントです。
恐らく今後の税務調査では、特に個人事業者のご自宅の利用については、厳しくなるものと個人的には予想をしております。「ご自宅が、お店や工場でない事業者」の方は、ぜひ見直しをされてはいかがでしょうか。家事関連費は、水増しというよりも認識のズレや思い込みなどで否認されるケースが多いかもしれません。
3.まとめ
経費全般に言えることですが、必要経費の判断に迷われたら、「事業をやめても、その支払いは発生する」というものは、生活用、つまり必要経費ではない可能性が高いものと言えます。ひとつの判断方法としていただいてはどうでしょうか。
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