相続税の税務調査(臨宅調査)
- 公開日:2014/12/02
- 最終更新日:2015/03/27
相続税の調査を経験している方は、あまり周囲にはいらっしゃらないと思います。仮にあそこのご家庭には、相続税調査があったはずだ、としてもその関係者は、何も語らないのではないでしょうか。つまり、相続税調査は何をされるのか分からないというのが皆さんのお考えではないかと思われます。
ここでは、私の経験を交えて説明させていただきます。
相続税の臨宅調査とは
税務署の調査で、納税者の方のお宅へ訪問することを「臨宅調査」と言います。相続税の税務調査も、臨宅調査が主になります。ではまず、相続税の臨宅調査についてご紹介します。
相続税の臨宅調査(初日)
相続税調査の場合、臨宅調査の初日は必ず2名でやって来ます。どの税目の調査でも、やはり初日は重要です。初日に押さえなければならないモノを逃してはいけません。
2名の場合、1人が質問役、1人がメモ役をする場合が多いでしょう。相続税調査は、相続財産の確認を行なう旨の説明が最初にありスタートします。この初日では、できる限り相続人全員が同席していただくことになるのですが、最近では、高齢やご病気などで同席できない相続人が増えています。調査ではまずお亡くなりになった方の人物像を聞き取りします。
- どこの出身か
- 学校や職歴
- 趣味
- 投資や財産形成の傾向
- ご家族や会社への金銭の貸し借り
- お子様などへの援助や贈与
- その家族における進学、結婚や出産などのお祝いの習慣
- 亡くなられた方が金融機関をどのようにりようしていたか
(頻繁に行っていた、ほとんど窓口には行ったことがない、ATMを利用する、しないなど)
などなど、人間的な性格や金銭に対する考え方、行動などを聞き取りします。また、重要なのはお亡くなりになった際の状況です。ご病気になられたのはいつか、正常な判断や意思表示ができたのはいつ頃までか、お亡くなりになった際には誰が現金の管理をしていたのか、などの質問をします。
相続税の臨宅調査(2回目以降)
臨宅調査初日が終わると、調査官は税務署へ帰るわけですがその際、その場で確認作業ができなかった書類などを借用する場合があります。借用するものは、その都度、違いますが
- 預金通帳
- 証券会社や保険会社からの通知案内文書
- お亡くなりになった方が利用していた手帳やノート類
などです。借用した書類は、税務署で確認作業をします。また、事前に集めた情報との照合を行います。その結果、新たな質問や確認項目が生ずれば再度の臨宅ということもあります。相続税調査も、他の調査同様に金融機関等への調査を行うケースは多くあります。
相続税調査と他の税目の調査の違い
相続税調査は、法人税や所得税の調査とは全く違うものとよく言われています。それは、簡単に言えば記録されたものが、ほとんどないと言う点です。
法人税などは、帳簿組織が出来上がっていて「現金が動いた」ことが分かると
「何を買った」
「何かしらのサービスを受けた」
などが分かるようになっています。
帳簿組織がしっかりしていれば検証機能があるということになります。相続税調査では、記録としてあるものは預金通帳が主となります。
この預金通帳は、「お金が動いた」ことは分かりますが、そのお金が、
「何かを買った」
「債務を支払った」
「現金化した」
など行き先や結果が分からないのです。私が、相続税調査を担当していた際、メモがされている通帳を見つける場合もありましたが、ほとんどは何に使われたのかが分からないものでした。唯一の記録がこのような状況なので、後はひたすら相続人の方に質問をすることになるわけです。預金通帳の中身は、多くの方はあまり把握していらっしゃらないと思います。ましてや、お亡くなりになった方の通帳の内容など分かるはずもありません。
臨宅調査では、その不明入出金の解明ができる、何かしらの材料を見つけなければならないのです。通帳の保管場所やお亡くなりになった方の良く利用されていたスペースなど、そのような場所に、何かを見つけるため調査官はいろいろなものを探すのです。
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