預金取引の全貌把握に向けて
- 公開日:2014/10/03
- 最終更新日:2015/03/26
税務調査では、預金取引の状況を確認することが大事なポイントとなります。なぜ大事なのか、それは「家族の名義の預金口座を利用して売上金額を除外して申告額を少なくしていた」ケースがあちらこちらで見受けられたからです。では、どんな手口があったのでしょうか。
1.奥様名義の預金口座へ入金
現金商売では、レジ打ちをしたものが売上金額の記録になることが多いようです。レジ関係も奥様がキーを押している事が多く、まず一定の時間に集計するキーを操作します。売上集計金額と、明日のつり銭を用意して、レジのあるカウンターへ戻します。その時点でレジは、電源をオフにしておきます。
しかし、この時点ではまだお店を閉めていません。残っているお客様のお金を精算した場合には、レジ打ちをしないことになります。この残っていたお客様の売上金が除外されることになるのです。この除外したお金は、奥様が管理していて一定金額まで貯まると奥様の名義の預金口座へ入金されるのです。
このように奥様名義の預金残高が不自然な入金を繰り返し、残高が増える一方だったので売上除外が判明したケースです。
2.子供名義の積立預金
ご商売をされている方で、毎月一定金額を積み立てる方式の預金口座を持っていらっしゃる方も多いと思います。銀行さんとも付き合いが長くなると、いろいろと預金をお願いされることもあると思います。銀行さんが言いました。
「ご主人さん、お子さんの定期積金しませんか。110万円まで贈与税はかかりませんから、
毎月5万円でも60万円ですので贈与税申告はいりませんよ。」
「そうか」と言いつつ深く考えずに少額の積み立てを決めてしまいました。
そこのレジは、簡単な内容の記録はできたのですが集計機能が壊れていて、毎日の売上金額は、残っていた金額からつり銭を引いた金額を記録していました。そのお子さんたちの名義の積み立ての資金も、少しづつレジから出していました。銀行さんに預けるようにお金を封筒に分けて入れて、渡していたのですがレジから抜いたお金は結果として売上金額に計上されておらず、売上もれになっていました。売上もれの金額は、お子さんたちの定期積金の金額となりました。
3.仕送り用の預金口座
実家から離れて暮らすお子さんのために仕送り用の口座を開設していました。仕送りは、毎月一定金額を定期的に行っていたようです。仕送り専用の口座に入金して、お子さんがキャッシュカードを利用して引き出しをするという方法です。
調査があったときその専用口座を開設して8年程度が経過していました。通帳が手元にあったので拝見させてもらい、「まだ、仕送りをしているのですか」と質問。お母様が、「そうですね、浪人と留年を繰り返してまだ就職もちゃんとしていないので・・・。」との説明がありました。
確かに決まった時期に一定の金額が入金されて、キャッシュカードで引き出されていました。
ある時期までは・・・。
とある時期から、キャッシュカードの操作した支店番号表示が変わっていたのでした。その支店というのが、調査対象者の取引をしている銀行の支店番号だったのです。いかにも仕送りをしている形を継続していたのですが質問を繰り返ししたところ、仕送りをし始めたころから、売上の除外をしていたことが判明しました。
まとめ
家族名義の預金については、いろいろなものが見え隠れします。本当にその名前の方が使っている口座かどうかを見極めないといけません。このあたりは、将来の相続財産などの考え方にも影響するところでもあります。所得税の調査は、家計費やご家族の財産にとても影響がありますので、何も悪いことをしていない方にとって見ると、「なんでこんなところまで見るんだ。」ということになります。
しかし、過去に世間ではいろいろとよろしくないことをやってきた人たちを見ている税務署職員は
「まさか、ここはやってないだろうな。」と思いつつ質問をしているのです。
「ここもやっているだろう・・・」と思っている職員もいるかも・・・。
いずれにしても、所得税調査でもご家族の名義の預金通帳を見たがるところは、そのような経験などが理由でもあるのです。
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