著名人や富裕層への税務調査
- 公開日:2015/04/21
- 最終更新日:2015/04/21
かつて税務署にいたころ、調査先から言われた言葉があります。「こんな小さなところにばっかり調査に来て、もっと大きなところをやれよ!」と。そんな言葉に私は、「ご安心ください。多くの厳しい職員がちゃんと対応しています」と答えていました。
国税局、税務署では様々な調査を行っております。今回は、著名人や富裕層といった方々への調査を紹介させていただきます。
1.著名人への調査
著名人というとどんな方が入るのか、なかなかピンとこないかもしれません。有名タレント、大きな賞をいただいた大学の教授から、作家や書道家などの文化人、有名スポーツ選手、
簡単に言えば「多くの方が知っている方」や「業界の権威ある方」です。
これらの方々も税務調査の対象となるケースは当然あります。
かつては、スポーツ選手などは節税対策として、選手家族などを代表とした法人を設立したりしていましたが、最近では、他の分野でも、その動きが広がっているようです。
また、テレビに出る著名人を所属させるタレント事務所などもあるようです。テレビや映画、芸能関係は、直接現金での支払いが根強く慣習としてあったので、実際の取引金額が把握しづらい状況であったと聞きます。
そんな時代でも、著名人と言われる方々も調査対象となり、たまにですが、週刊誌等を賑わせていたものです。
国税局や税務署では、著名人の情報収集を普通の事業者と同様にしています。現在、多くの報酬は、サラリーマンと同様に、所得税の源泉徴収をしておりますまた、年間の支払額を証明した支払調書が発行され、その支払調書は税務署にも提出されることから、申告が正しいかどうかを判断をしています。
2.富裕層への調査
次は、富裕層と呼ばれる方々への調査についてですが、この「富裕層」と呼ばれる方々はどんな方々なのでしょうか。例えば、土地をいくつも持っており不動産の収入だけでも、何千万円、何億円となる、他にも、法人をいくつも経営している、などをイメージしていただければと思います。そんな方々は、多角的な情報収集をしていくのですが、さきほどの著名人とは違うところがあります。テレビなどの出演がないということです。
先祖代々の土地所有者は、質素な暮らしをされている方も多いので、なかなか一般の方からは分かりにくいものと思われます。
逆に、富裕層が集まっていると言われているエリアがあったりもします。家の敷地が周辺と比較すると、2倍~3倍となっているようなところもあります。富裕層と一口に言っても、その成り立ちにより様々なのです。
国税局や税務署では、富裕層のどのような情報を収集しているのでしょうか。以前は、所有不動産や預貯金や上場株式などの情報が中心でした。所得税の確定申告で、2千万円の所得金額を超えると「財産債務の明細書」という書類を提出しなければなりません。その明細書を基礎として、情報収集を行っていました。
最近では、国外の取引も簡単になり、特に会社経営をされている方々は、その取引先を海外に求めるようになったことなどから、海外に財産を保有するようになっています。国税局や税務署は、当然、そのような海外の財産に関する情報収集を始めています。
また、法律でも国外送金の調書の提出や国外に保有する財産の明細を提出する(国外財産調書)などができています。税逃れのために海外に居住したり、財産を移転させるという手法を雑誌等で紹介PRされていますが、海外財産の把握対策ともいえる法律になっています。
では、富裕層の調査はというと、収入の種類や内容により違ってきます。不動産収入が多い場合でしたら、所得税調査となります。土地建物が、どこにどれだけあるのか。土地建物を売買した場合には、その代金はどこに入金されているのか。その後、家族名義の口座などに移っていないか、などを調べることになります。
会社経営者でしたら、法人税調査です。経営する法人から、いくら役員報酬や配当金をもらっているのか、その法人の経理は正しいのかなどをチェックをします。将来には、相続税調査が予想されるわけですから、富裕層は、いろんな段階で調査を受ける可能性があるということです。
3.まとめ
基本的には、著名人も富裕層も所得税や法人税の調査では、一般の方々と違うわけではありません。皆さんと同じように、税務調査は受けています。ただ、その情報がないだけなのです。
国税職員は、調査情報を漏らしたりしてはいけない「守秘義務」がありますので、個別の著名人や富裕層の方などの調査を行ったなどのPRはしていません。
しかし、「富裕層の調査チームの発足」などの新聞報道が過去にありましたので、「富裕層」に注目していることは間違いないところです。
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