税務調査官が所得税税務調査の選定時に対象とする3つの項目
- 公開日:2014/09/17
- 最終更新日:2015/03/26
個人事業者の方は、どのくらいの割合で税務調査を経験されているのでしょうか。
「商売を始めて10年経つけど、調査なんて一度も無いよ。」と、言われる方も多いのではないでしょうか。
では、そのような声が聞こえる中で調査の対象になる方はどのような場合なのでしょうか。
簡単に説明をさせていただきます。
1 個人事業者の事業規模
昔と思うと、個人事業者はたいへん厳しい時代と言われています。
大型スーパーの出店で、商店街の客足が減った、子供が跡継ぎにならずサラリーマンになった。
個人事業では、仕事をもらえない、など、いろいろと理由はあると思います。
各業界とも個人事業の平均的な収入金額も、20年前と比較して減少しているのではないでしょうか。
このような現状も、税務署では、各種のデータを見ながら分析をしています。
データ分析は、税務署内部のデータを一元管理しています「KSKシステム」で行うわけですが、
税務職員は、あらゆる機会に情報収集も行っています。
単純に、申告書や決算書のデータを比較分析して、「ココを調査しよう。」と決めているわけではないのです。
また、税務署も所得税だけの調査では効果(追徴課税が見込まれる)が低いと考え、
- 消費税
- 源泉所得税
などの調査も同時に行える納税者の方を選ぶ傾向があります。
と言うことは、次のような条件とも言えます。
- 売上高が約1千万円前後から
- 従業員もいる
事業所となるのではないでしょうか。
これは、あくまでも筆者の推測ということをご了承ください。
2 調査対象になりやすい業種など
先ほど述べました基準等も考慮に入れ、また調査で効果が高い業種は何か。
また、税務署職員が昔から、気をつけないといけないと考えている業種などがあります。
あくまでも税務署的に見たものですので、ご勘弁ください。
- 水商売(特にアルコールを提供するお店)
- 職人を多く抱える建設関連業(外注費の支払いが多いところなど)
- 高額所得を得ていると推測される先生業種(医者、弁護士など)
- その他、時期に応じて好況業種及び関連業種など
最近では、お店や事務所を持っている業種の方だけではなくパソコンひとつで仕事をしている方もいらっしゃいます。
また、国税内部にはインターネットなどから情報収集を行う専門チームなどもあります。
こういったところからも、以前はこんな業種が調査に入りやすいという説明をさせていただくことも多かったのですが、
あてはまらなくなっているところがあることも事実です。
もしかして税務署内部では、まったく違う業種について選定を行っているかもしれません。
3 富裕層について
最近では、個人事業者のみならず「富裕層」と呼ばれる方々への調査も行われています。
富裕層と聞いて、どんな人たちかと言う定義は難しいのですが、例えば
- いくつも会社を経営している。
- 海外に資産を所有している。
- 著名人である。
- 推定資産総額が〇億円超である。
- 不動産収入が一定金額以上ある。
※金額的なところは、皆様で推測してみてください。
筆者も分かりませんので、あしからずご了承願います。
このような方々は、将来の相続税の高額納税等も見込まれるため、所得税調査の際に確認をした情報は、きっちりと記録されるものと思われます。
最近では、海外にも資産を所有されている方も増えております。
所得税の確定申告と同じ時期には、海外に所有する資産について、税務署へ報告をしなければならなくなりました。
この報告の有無によって、将来の課税関係にも影響するという制度ですので十分、ご留意ください。
所得税の確定申告をしていない方への調査
なかなか所得税の確定申告をしていない方への税務調査は困難なようです。
と言うのも、所得税法の規定によりますと、簡単に言えば、「所得税について、計算したら、いくらか出ます」と言う方は、「申告義務」があります。
逆に「所得税の計算をした結果、0円またはマイナス(還付)でした」と言う方は、「申告義務」は無いのです。
※税額が、0円またはマイナス(還付)の場合でも申告義務があることもあります。
申告義務が無い方に、税務調査を行うというのも変なので慎重にならざるを得ません。
このあたりが、税務調査の事前検討で悩む点なのですが、先ほどNO1「個人事業者の事業規模」で述べました、消費税の課税事業者やお給料をたくさん支払っている方は、所得税がダメでも、
- 消費税
- 源泉所得税
などの調査効果が見込まれる場合もあります。
申告をしていない方は、こちらの税目にも注意を払われることをおススメします。
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