架空人件費
- 公開日:2015/12/11
- 最終更新日:2015/12/11
「架空人件費」と言う言葉は、お聞きになったことのある方は少ないのではないでしょうか。
人を雇っているように見せかけて実は雇っていないことを言います。
今回は、その架空人件費のお話です。
1 架空人件費について
「税金対策のために、何かいい方法はないですか。」そう言われて、こんな方法はどうかと簡単に提案できるものではありません。
しかし、昔?よくあった手法として架空の従業員をでっちあげて給料を支払ったことにして経費を増やして・・・、なんて言う方法を使っていた事業主は、税務調査でよく見かけることがありました。
税務調査で、給料の支払いの確認については「どこ」の「誰に」支払ったかを確認します。つまり、住所などを聞くわけですが事業主さんによっては、(住所を)「知らないなぁ・・・」とか言うわけです。
「あなた、住所の確認もしなかったの?」と聞きなおすと「そのときは聞いたと思うんだけどね。」とのらりくらりと返してきます。
その後は、給料の支払いや受け取り方法、給与明細書の交付などを細かく聞いていくことになります。何度も何度も聞くのですが、明確な回答が来ないと、その人件費分は認められませんと税務調査官は指摘をします。
人によっては、書類を後日に作ったと思われるものを提示してくることもあったのですが、逆にボロを出す結果となることが多くありました。
2 決算案の作成時に水増し?
人件費の架空計上や水増しは日頃の処理で行われている場合もあれば、決算案を作成している際に利益金額を見て、慌てて何かしなければと思う方もいるようです。
以前、お聞きした話では決算書案を作成していたときに、利益額が自分の想定していた金額とかけ離れていたため「何かしなければ。」と思ったそうです。その「何か」が、人件費の水増しでした。人件費の頭の数字を少し多めの数字に変えたのでした。
税務調査では、ベテラン調査官が、各アルバイトさんの源泉徴収簿を懸命に見ていましたが、特に問題は無いとしていたのです。しかし、若手の調査官が電卓をたたいては首をかしげていました。電卓による源泉徴収簿の合計と、決算書の記載金額と違っていたのでした。
事業主に尋ねると差額は、たまに来たアルバイト分の雑給と主張したのですが、差額は雑給とするには高額であることや差額に端数がついていないことなどから、しつこく質問をしたところ、水増しをしたとの説明がありました。水商売や飲食業に多く見られました。
3 マイナンバーによる確認
平成28年から、マイナンバー制度が始まります。
これは従業員として採用をしたときには、従業員の「マイナンバー」を確認しなければならず、税務署や市役所などへ税務関係書類を提出する際には、その書面にマイナンバーの記載をしなければならないというものです。
現時点での取り扱いがはっきりしないのですが、「マイナンバー」の確認がその人の証明代わりとなるのです。マイナンバーが確認できれば、住所や生年月日なども判明します。税務調査では、マイナンバーの確認ができていない従業員などがポイントになるのかもしれませんね。
マイナンバーは、「税金」「社会福祉」などの分野で利用されます。サービスの公平性や行政側の効率性の向上に期待がされています。
このような制度ですので、マイナンバーが他者に漏れたらたいへんです。取り扱いはお大事に。
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