贈与税の税務調査のポイント
- 公開日:2015/01/22
- 最終更新日:2015/03/27
「贈与税」、あまり身近ではない感じもしますが、一部の方々は、非常に意識している税金かもしれません。常に、「相続」とセットで考えている方は多いようです。
1. 贈与税の調査選定について
贈与税調査は、以前はほとんど相続税調査と一体で行うことがほとんどでした。最近では、複数の税目を担当する大型事案を行う部署ができて「法人税+相続税+贈与税」を行うなど、以前とは対応を変えてきています。贈与税は、他の税目とセットで選定されることが多いのです。
例えば、相続税の準備調査を行った際、財産所有者が孫(相続人ではない人物)の口座へ資金移動をしている。孫の口座は、果たしてどのようなお金が出入りしているのか、内容を確認して、相続財産とするのか孫への贈与として贈与税を課税するのか、という具合です。譲渡所得の調査でも、大きな金額が動いていることを把握するケースがあります。一時的な大金が入ってくると、子供に渡したりすることが多いのです。
贈与税の課税対象として、土地や建物を売却したお金がどうなったかを確認します。税務署では、いついかなるときも預貯金の動きが把握できる機会を狙っています。大きなお金が動く機会は、
- 家を購入するまたは新築をするとき。
- 土地などを売却(収用)したとき。
- 相続などで財産を受け取ったとき。
このような機会では、一定の金額を自分のところへ残しておいて、自分としては、使わないお金を上げてしまうことなどが確認されることがあります。
2. 「贈与」の成立の条件
相続税調査で、いろいろ質問をしてきましたが、お子さんの名義の通帳を見ながら質問をした際に、「このお金はお父さんが息子に「贈与」したものです。」という回答をよく聞きました。「贈与でもらったのに、ほとんど使っていませんね。」と息子さんに聞くと「通帳は、母が管理していましたので・・・。」と、息子。「では、銀行印をお見せいただけませんか。」と、聞くと「銀行印は、どの印鑑を使っていたのかは、僕では分かりません。」との答え。「この通帳のお金は、贈与してもらったと言いますが、残高はおいくらでしょうか。大きな単位で教えていただけませんか。細かなところまでは結構です。」と、さらにお聞きします。「さぁ~、僕は覚えていませんが・・・。」という答え。
このように、調査官は「贈与」のことについて繰り返し聞いてきます。これは、「贈与」が成立していないからなのです。
贈与は、あくまでも「あなたにこれをあげました。」「確かに受け取りました。」という本人の認識が必要です。先ほどの質問のやり取りで、息子さんは「私は、過去にいくらくらいのお金を贈与で受け取りました。」という認識がほとんど無い、または、実感が無いのです。
「受け取りました」という認識が無いのは、
- 実際に通帳などを見ていない。
- 「あげました」と言っているが、将来、いつの日にか渡す約束だけをしている。
- 親は、贈与と言ってはいるが、言葉だけであげる気はない。
いろいろなことが考えられますが、いずれにしても贈与の実行がないものと想定されることになるのです。贈与したお金を、息子がどのように使おうと勝手なはずですが、余分な買い物をされては困るとして、成人になっても通帳や印鑑を親がずっと預かっている傾向があります。そのような経済的な感覚などがない方に、贈与をするものでしょうか。
調査官は、親御さん方は「贈与」と言う言葉を使ったかもしれませんが、それは、単なる将来の約束をしただけではないか、というような雰囲気にします。そして、最終的には「贈与」が無かったものとして判断を行うのです。
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