税務調査(所得税調査)で知っておきたい3つのポイント
- 公開日:2014/08/21
- 最終更新日:2015/03/26
個人事業は意外と簡単にやり始めることができるものです。
やり始めたはいいけど、税金のことは分からない。誰に相談していいのかも分からない。
「最初のうちは申告しなくていいんでしょ?」なんて言う方もいたりして、所得税の確定申告に関する情報が少ないのか分かりませんが誤解されている方が多いのも事実だと思います。
申告手続きを行わないとどうなるのかは、別の機会にするとして申告手続きを行っている方が不安に思っている税務調査、所得税の調査はどんな調査なのか、どんな人がどんなことをするのか説明をしたいと思います。
税務調査(所得税調査)で知っておきたい
3つのポイント
所得税調査は、一部を除き事前に訪問日時等を連絡されることが多く、理由によっては日程調整も可能です。
ここで日程をズルズル先延ばししても調査は行なわれますので、連絡が来たら逆に早く終わらせることを考えたほうが良いと思います。調査期間が長いほど、精神的な苦痛も長くなります。
一部の方は、徹底的に戦う姿勢を出される方もいますが、ご自身の仕事や家庭に影響が出なければいいのですが・・・。
①調査担当者 税務調査官について
さて、初日の訪問は、調査担当者ともう1名の2名という場合が増えているようです。ひとりは質問をする役割、もひとりはメモをするという分担となります。
初めは世間話や納税者の方の近況、業界の話などをします。ご家族の状況、特にお子様の進学や結婚などは必ずお聞きすると思います。最初は、調査的な話は無く、どちらかというと納税者の方の身辺の話をお聞きします。
ある程度の話が進んだところで、調査の話ということになります。というのが私が税務署にいた頃の話です。
最近では、調査着手をする際に法的な説明が必要ということで、「〇〇さんの平成〇〇年分の所得税・・・・・・・・帳簿等の確認をさせていただきます。」と、なんとも長いセリフの周知事項から入ります。
先ほどのような、世間話からということも最近は少ないようです。
②帳簿調査内容と税務調査中の調査官について
事業者ごとに経理関係の分担、処理方法などは違ってきますので、調査ではまずお金や商品、サービスがどのように流れていくかをお聞きします。そのうえで帳簿に記載された内容の確認を行なっていくわけですが、調査官が元帳、請求書や領収証を見始めると沈黙の時間となります。
調査官の手の動きや視線がだんだんと気になるようになります。たまに金額を追っている視線や指が止まると、納税者の方は急に緊張が高まるようです。しかし、調査官はなかなか質問をしません。
たまに声が出ますが、一緒に来ている調査官に対して小さな声でしゃべっているだけです。そんな時間が午前中、続いたりします。
お昼の1時間は休憩を取るので、一旦、席を外します。
納税者の方の一部には、昼食を用意した方が良いのではとお考えになる方もいらっしゃいますが調査官は遠慮しますので気にしなくて結構です。
お昼休憩の前後に追加で用意する資料などを告げられ場合もあります。
午後からは、元帳や追加資料の照合や簡単な質問が行なわれます。
質問も時折、行なわれるのですが自分の回答しても調査官は「そうですか。」「ふ~ん。」程度の返事をするだけなのでご自身の回答が良かったかどうか不安になったりします。また、特に現金商売の方への調査はレジ周辺や手提げ金庫などの管理状況をお聞きするのと同時に現場確認をすることがあります。
手提げ金庫内やレジの現金残高の確認なども行ないます。調査日現在の現金と帳簿上の現金残高を確認して、金額に違いがあれば理由をお尋ねします。
初日に確認しなければならないことを一通り終えると、税務署へ戻るわけですが宿題が言い渡されることがあります。
・不足していた書類や帳簿等の準備
・確認できなかった取引金額の解明 など
また、調査官は必要に応じて取引金融機関や取引先(販売先、仕入先や業務上、必ず必要とする消耗品等の取引先など)へ取引金額の確認などをします。このような作業を経て申告内容が正しいのか間違っているのか、いやあえて少ない所得金額として税金を逃れているのかなどを確認します
③税務調査後の納税 調査結果について
調査した結果について、間違った計算がないか、税法上の取り扱いなどの誤りは無いかなど税務署内部で検討を行ないます。十分な検討を行なった後に納税者へ連絡がされます。
調査結果の分類には次のような種類があります。
- 申告是認・・・申告内容は正しく、特に直すところはないもの。
- 修正申告・・・申告内容に一部誤りがあり、納税者が納得して修正手続きをするもの。
- 更正決定・・・申告内容に一部誤りがあるも、納税者が納得せず税務署長が税額通知を行なうもの。
申告是認では、修正手続き等の必要が無い旨の税務署からの通知が来る場合もあります。修正申告の提出や更正通知を受け取った場合に税金の追徴があります。また、加算税や延滞税という税金も負担しなければなりません。
加算税は罰金てきな性格で次の種類があります。
- 無申告加算税・・・申告期限までに手続きをしなかった場合に税額に対して、5%または15%が課されます。
- 過少申告加算税・・当初の申告と修正申告の税額の差額に対し10%が課されます。
- 重加算税・・・・・調査の結果、悪質な行為があったとした場合には、過少申告加算税に代えて35%が課されます。
加算税も内容によっては、負担金額に大きな差が出る場合があります。延滞税は、申告期限から実際に納付した日までの期間計算により計算されます。
個人課税部門(所得税)職員の資質
ここについては私個人的な考えが大きいことを先にご了承いただきたいと思います。
所得税調査は調査手法が幅広く納税者の税務上の知識レベルもまちまちです。特に相談相手がいたとしたら、その方のご意見を汲み取る傾向が強いのも事実です。
相談相手が無責任にも「開業してから3年くらいは申告しなくていいって言うよ。」なんてことを鵜呑みにすることもよくあることです。
では、そんないろいろな納税者の方に所得税調査をする職員の資質って一体何が必要なのでしょうか。
それは、短時間でいかに納税者の方に信頼を得られるかに尽きると思います。どんな調査でもそうじゃないかと思われるかもしれません。
しかし、他の税目は税理士の関与する割合が多く、個人事業者の場合は税理士が関与していても毎月の訪問等でない場合が多い傾向があります。税法上の取り扱いや税務調査に慣れていない方が多いのが現実ではないでしょうか。
また、所得税の調査は帳簿調査も行いますが個人的に利用している預金通帳なども見たりします。個人事業者は「事業用」「家庭用」と分けて利用していない場合もあり、いきなりプライベート部分を見せなければならない状況を作られてしまいます。
もちろん納税者の方は抵抗をします。
そんな状況で短時間に納税者の方とどんな形であっても信頼関係を築かなければ調査は進められません。
いかに短時間に信頼を得られる方法を身に付けているか、これが個人課税部門職員、特に所得税調査を担当する職員としての資質のひとつだと思っています。
「税法では、こうなっていますから、あなたの申告は間違っています。」と簡単に言って納税者の方を怒らせる場面を多く見てきました。
調査終了時に、「まあ、あの人が言うんだから、そうなんでしょ。」と言って、一連の説明を聞いて納得して終わるかは、ほんの少しの差です。
つまり人間的な部分をいかに出すかというところでしょうか。調査する側も自分の人間味みたいのところを見せないと相手も腹を見せてくれないものです。
しかし、この資質を備えていないと腹立たしい思いをして調査が終了し、税務調査に対する嫌悪感だけが残ることになります。残念ながら、このような資質を備えた職員ばかりではないのも事実です。
2.税務調査(所得税調査)のまとめ
所得税調査は所得税申告をしている総数から考えると、調査に来る割合は相当に低いものであり「一生のうち1回あるかないか」というものになります。しかし、ご自身が消費税課税事業者または予備軍(売上金額800万円超)である場合は、そんなのんきなことを言ってられません。調査対象は、そういった方々から選ばれる傾向にあります。
税務署も所得税だけの方よりも消費税の事業者であれば、調査結果により2種類の税金を徴収できることを効果的と見ています。
売上金額が800万円超の方はお気をつけください。
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