相続税の税務調査選定について
- 公開日:2014/11/18
- 最終更新日:2015/03/26
平成27年の税制改正が予定されています相続税ですが、最近は、ネットや書籍、週刊誌までもが特集記事の掲載をしていますね。その掲載内容は、多くは「あなたの財産にはこれくらいの相続税が計算されて、以前よりも〇〇%増える」という感じの内容ではないでしょうか。
相続税申告書を提出して納税も済ませました、はい、これで完了です、と言ってホッとすることでしょう。相続税申告書の提出から、約1年経ったある日、税務署から電話が来るのです・・・。
今回は、この申告書を提出してから税務調査を行います、というこの間に税務署内部では
どのような動きがなされているのか説明をしたいと思います。
1.相続税申告書の提出から審査へ
相続税の申告書があると、他の税目の申告書と同様に電算機によるチェックを行います。簡単に見つかる間違いであれば、すぐに連絡が入ります。
しかし、表面的な計算等の誤りが無ければ次の段階へ移ります。
税務署では、各種の情報を蓄積しています。できる限りの情報を集めて、財産の状況等を推測します。税務署内部で持っている情報をかき集めるわけです。情報というのは、税法で規定された各種の支払調書や税務職員が調査などで入手したものまで多岐にわたります。
- 平成〇〇年では、〇〇百万円の生命保険の満期一時金がある。
- 平成〇□年に、父親の相続財産を受け取っている。
- 平成□□年に、保有していた土地を手放している。このときの売却金額は〇〇千万円だった。
などなど、各種のバラバラの情報をつなぎ合わせていくのです。
これらの情報は、相続税調査の際も実際に確認をされます。また、毎年提出している所得税の確定申告書や会社経営者であれば、その会社の法人税申告書などに記入されている情報も織り込まれていきます。相続税の場合は、相続人の情報も集めて検討を行います。各情報を時系列にして調査を行うかどうかの基礎情報を作ります。
2.各種照会等の実施について
相続税で申告された財産について、確認作業を行う際、例えば、土地建物などであれば固定資産税の課税状況や登記情報を確認します。生命保険金であれば、生命保険会社へ文書照会を実施し、預貯金であれば、金融機関へ文書による照会をおこないます。
相続財産の確認には、このように各機関への文書による照会を行い、回答結果を申告財産と照合が必要となります。この照会作業の結果などを先ほど説明しました税務署内部にある情報に織り込みます。
3.お亡くなりになった方が経営していた会社について
以前から、相続税の負担をされる方の職業として、医者や弁護士、会社経営者などと言われています。会社経営者は、会社に対する出資、または貸付金などが財産として考えられます。出資は、単に額面金額ではなくその会社の株価評価計算を行うことになります。
中小企業は上場しているわけではないので、市場価値というものがありません。そこで税法では、会社の規模に応じて株価評価の方法を決めています。ここでは、その考え方だけ紹介させていただきます。
①純資産方式
「その会社を整理したと仮定して、解散したらいくらの財産金額が残るのか。」という考え方です。預貯金や土地、建物などの資産合計から、支払いが残っている債務を差し引いた残りの金額が、その会社の価値になります。その価値を発行株式数で除した金額を1株あたりの単価として計算します。あとは権利のある株式数を乗じて、株価評価を計算します。
この計算を行う際に、次の点に気をつける必要があります。
- 退職金の有無 ・・・ 退職金は債務になります。
- 死亡保険金の有無 ・・・ 保険金も未収計上するとともに保険積立金があれば減算するなどの調整が必要です。
その他にも、換金可能性が無い科目は計上しないなどの調整が必要です。
②類似業種批准方式
「その会社と同じ業種の評価要素を用いて、株価評価をする。」というものです。これは、各業種の上場会社の要素、「配当金額」「利益金額」「純資産額」「平均株価」を参考にして一定の計算方式に当てはめて、評価計算を行います。上場会社の株価と連動した動きになります。
①または②の方法のいずれか、または①と②の併用により評価を行います。これも税務署に提出のある法人税申告書から計算を行い、相続税申告書の金額と照合します。
法人税申告書には、その他に次のような情報を集めます。
- 会社への貸付金や未収金(会社経理上は、未払報酬、短期借入金や役員借入金)
- 会社からの借入金(会社経理上は、短期貸付金や役員貸付金)
- 家族への報酬など
4贈与税申告書の確認について
相続税の申告にあたり、3年以内に行われた贈与財産も相続税財産として加算しなければならないという規定あります。そのため、相続人が申告しました贈与税申告書の内容も確認して、相続税申告書に計上されているか照合します。
最近では、「相続時精算課税」という特例制度があります。贈与で財産をもらっても、相続税の計算に盛り込んで税金の精算をしましょうという制度ですが、意外にも申告計上を忘れているケースがあります。いろいろと理由は考えられますが、無くなられた方の面倒を見ていた税理士と相続税を依頼した税理士が違う場合などに起きているケースがありました。
このように税務署内部の情報、改めて収集する情報などを基礎に財産の形成過程などを推測イメージをします。その推測した財産金額と申告額との開きの有無、大小によって相続税調査を行うか判定をします。
※今回の、流れはひとつの見方を示したものです。
実際には、もっと直接的な材料があって調査選定の判断をするケースもあります。
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